不動産の証券化とは?【初心者向け】

不動産の証券化とは、「ある不動産が、証券化のために設立された特別な会社等に売却され、その特別な会社等が取得不動産のみを裏付け財産とした資金調達を行うこと」をいいます。

つまり、証券化するための専用の受け皿として会社等を用意し、その会社に対して不動産を売却します。そして、その不動産を買い受けた会社(SPV(special purpose vehicle))は、買い受けた不動産を裏付け資産として、金融機関や投資家等から資金調達を行うんです。

下記のスキーム図を見ればイメージしやすいかもしれません。

↑(出典)国土交通省HP

それぞれのプレイヤーの詳細は下記のとおりです。

①アレンジャー

証券化商品の組成を行う業務をアレンジメント業務といい、これを行うプレイヤーをアレンジャーと言います。アレンジャーは、信託銀行等の金融機関、証券会社等が考えられます。アレンジャーは証券化の全体的なストラクチャーを設計し、SPC設立の手配や資金調達などの全体の調整役を行います。現在は、アセットマネージャーがアレンジメント業務を行うことが多いように思います。(少なくても私が鑑定評価をしている証券化対象不動産はそうです。)

②アセットマネージャー(AM)

アセットマネージャーは証券化対象不動産の運営・管理を行う人を言います。不動産を売却したり、購入したりすることで不動産ポートフォリオを組んで、投資家に配当を出すために調整をしているプレイヤーです。私は不動産の鑑定評価をしていますが、その鑑定評価額を投資家に説明するのはアセットマネージャーの仕事です。アセットマネージャーはアセットマネジメントフィー(AMフィー)を受け取ることでビジネスとして成立しています。

③プロパティマネージャー(PM)

プロパティマネージャー(PM会社)とは、不動産の運営管理やテナント管理を行うプレイヤーのことです。PM会社はテナントのリーシングや賃料改定の交渉を行ったり、建物管理(BM)を建物管理会社に発注したりすることで、プロパティマネジメントフィー(PMフィー)を受け取ります。

④建物管理会社(BM)

建物管理会社(BM会社)は、PM会社からの発注により警備や清掃、ビルメンテナンスを行う会社です。BM会社に支払うフィーをBMフィーと言います。昨今は証券化が普及して、多数の物件を管理することでスケールメリットが働いてBMフィーは安くなる傾向にあります。

⑤レンダー

レンダーとはデット投資家である金融機関等のことを言います。

⑥エクイティ投資家

エクイティに出資をする投資家をエクイティ投資家と言います。

ちなみに、普通の会社であれば、資金調達を行う際に、会社の信用力で金融機関等から資金調達(コーポレートファイナンス)を行いますが、不動産の証券化の場合、不動産により信金調達(アセットファイナンス)を行うので、企業としての信用力が多少低かったとしても、中長期的に安定的な賃料収入のある不動産であれば、低金利で借り入れを行うことも可能な場合があるんです。

ところで、なぜ不動産の証券化をするのでしょうか?

それは、当然、不動産を証券化することで各プレイヤーにとってメリットがあるからなんです。

上記に挙げたアセットファイナンスもそのひとつですが、オリジネーターにとって、主に下記のメリットがあります。

①不動産売却後でも、その不動産に対して影響力を残すことができる。

②自ら望むタイミングで不動産を売却して資金調達をすることができる。

③低利の資金調達ができる。(上記アセットファイナンス参照)

◇デット投資家(金融機関等)とエクイティ投資家にとってのメリット

デット投資家(金融機関等)とエクイティ投資家にとってのメリットを説明していきます。

デット投資家にとってのメリットは下記の2点です。

①投資家の選好に合う不動産証券化商品が供給される。

これまで投資家といえば、債券などの金融商品に投資をするイメージでした。例えば、長期保有国債とか株式等は金融商品の代表例ではないでしょうか。

しかし、不動産といえば、個別性が強く、さらに不動産特有の専門知識も必要になってきます。

したがって、投資家にとって不動産に投資をするということは、ハードルが高いものだったのです。

そこで、不動産を証券という金融商品にすることによって投資家の選好に合うようになり、投資家の幅が広がることとなったのです。

②オリジネーターの信用リスクから切り離された投資が可能となる。

不動産証券化を行わず、通常のどおり、会社が現物不動産を保有している場合、不動産に対して抵当権を設定したとしても、会社が倒産してしまえば、破綻処理手続きによっては、必ずしも担保不動産を処分して資金回収ができるわけではありません。

しかし、不動産を証券化する(SPCに担保不動産を拠出し、そのSPCに融資等を行う)ことで、「倒産隔離」をすることができます。要は、オリジネーターが破たんしたとしても、SPCとは切り離されているので、SPCが保有している不動産に破綻手続きの影響が及ばないのです。

次に、エクイティ投資家にとってのメリットを説明していきます。

エクイティ投資家にとってのメリットは、現物不動産に投資しなくても、現物不動産に投資することに近いリターンを得ることができるのです。

また、現物不動産の場合、額が大きいことが多いため、必ずしも単独で投資できるとは限りません。

しかし、不動産の証券化をすることによって、不動産投資が間接的に小口投資となるため、投資家の幅が広がったといえるのです。

以上が不動産の証券化のメリットです。今後も不動産についていろいろ解説していきますので、よろしくお願いします。

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