この記事では、償却率について説明していきたいと思います。
償却率と聞いてイメージできる人は少ないと思います。
減価償却費なら知っている人も多いかもしれませんが、償却率についてご存知の方はあまり多くありません。
しかし、不動産の鑑定評価において償却率は不動産の価格に影響してくる可能性があるものなので、論点としては重要なんです。
償却率は次の式により計算することができます。
建物価格割合 = 建物価格 ÷ 建物およびその敷地の価格
償却率の計算方法
例えば、下記の不動産があったとします。
建物:1000万円 (耐用年数40年)残価考慮なし
建物およびその敷地の収益価格:2500万円
※このとき、土地と建物の合計額が2000万円ですが、収益価格が2500万円となるのは、リーシングや開発リスクなどにかかる部分が収益価格には適切に反映されているからです。よって、鑑定評価理論においては、積算価格と収益価格は理論的には一致するはずなので、積算価格2500万円の内訳は土地1000万円、建物1000万円、付帯費用500万円ということになります。なお、ここでいう付帯費用にはテナントのリーシングリスクや開発リスクなどの付加価値のようなものが含まれます。厳密な話をすると混乱しますので、今回は割愛します。
このときの償却率の計算は下記のとおりです。
償却率 = 1 ÷ 耐用年数40年 × 建物価格割合50% = 1.25%
このとき、建物およびその敷地の収益価格は2500万円なので、減価償却費の計算は次のとおりです。
ん?
建物は1000万円で耐用年数が40年だから、
1000万円 ÷ 40年 = 250,000円
が減価償却費なんじゃないの?と思うかもしれません。
しかし、不動産の証券化市場において、不動産を購入をする場合、帳簿には建物価格1000万円ではなく、2500万円に建物割合50%を乗じた1250万円が計上されることになります。だから、建物及びその敷地の価格に償却率を乗じた場合と計算結果が異なったのですね。
なかなか難しいですよね。
そもそも減価償却費についてよく分からないという人は次の記事を参考にしてみてください。
償却率の不動産価格への影響
この償却率って、不動産の価格にどのように影響してくるのでしょうか。
例えば、都会と田舎では土地の価格は大きく違っても、建築費が大きく異なるということはあまりないかと思います。
その場合、
かつ
都会の建築費 ≒ 田舎の建築費
と仮定した場合、建物価格割合が大きいのはどちらでしょうか?
もちろん、土地価格のウェイトが小さい田舎の不動産ですよね。
ということは、田舎の方が償却率が大きくなります。すなわち、減価償却による内部留保の割合が大きくなります。
減価償却による内部留保についてよく分からないという方は次の記事を参考にしてみてください。
不動産の証券化においては、投資家から資金を集めて、投資家に配当を支払うことが必要となりますので、投資家の選好性としてはしっかり配当がある方がよいので、償却率が小さい方が選好されます。
つまり、都会の方が選好されるんです。(理論上は!)
もっとも、都会の方が選好されるのは当たり前で、土地価格が高いはずなんだから、償却率は低いに決まっているじゃないか!と言われたら、そのとおりかもしれません。
また、減価償却の内部留保をしっかりした方がよいという考え方の人もいるかと思いますので、一概には償却率が不動産の価格に影響するとは言えないのかもしれませんね。
やはり、不動産の鑑定評価は難しいけど、考える分だけ面白い。
まとめ
いかがでしょうか。
最後に償却率についてまとめると次のとおりです。
建物価格割合 = 建物価格 ÷ 建物およびその敷地の価格
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