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さて、今回は大阪のオフィスの賃料が増額されている理由と空室率が低下している理由について解説していきたいと思います。
まず、賃料が増額されているということは、オフィスの床の供給が追い付いていないことが原因です。
つまり、空室率が低下していることが原因ということです。
賃料増額と空室率の低下は概ね因果関係があると言えます。
しかし、空室率は未曽有の低水準であるにも関わらず、大阪のオフィスの賃料はリーマンショック前の水準まで戻っていません。
なぜだか分かりますか!?
答えは、賃料には粘着性があるからです。
賃料の粘着性と聞いても、不動産鑑定独特の言い方なのであまりピンと来ないかもしれません。
賃料の粘着性というのは、不動産の価格が上昇したとしても、賃料は不動産の価格と同じ変動率で上昇するわけではないという賃料の性質を言います。
分かりにくいかもしれませんが、今の大阪は(全国の中心地もそうですが)、土地価格が上昇傾向にあります。
大阪の中心部、特にインバウンドが多い道頓堀では30%弱の土地価格の上昇がみられます。
これにより、複合不動産(土地+建物)の価格も30%とまではいきませんが、数%の上昇がみられます。
なぜなら、収益物件の取引利回りが低下しているからです。
しかし、賃料はこの複合不動産の価格の上昇よりも上昇幅が小さくなります。
これは、賃料上昇には既存の契約条件に縛られるとともに、交渉が難航することがあるという心理的なものが関係しています。
このように、賃料の変動と不動産の価格の変動の幅は異なるんです。
〇空室率が低下している原因とは?
空室率が低下している理由、オフィスの床が不足しているからに他なりません。
それでは、なぜオフィスの床が不足しているのでしょうか?
大阪市内のオフィスがなくなっていることが原因として挙げられます。
その背景としては、3つあります。
①古いオフィスを取り壊してホテルを建築する
②自用のオフィスを売却して賃貸オフィスに移転する
③梅田への移転需要が増加した
①古いオフィスを取り壊してホテルを建築する
まず①から説明します。
大阪では、最近インバウンドの来日が異常に増えており、ホテル需要が増加しています。
これに伴い、大阪市内ではホテルの建築ラッシュが起きました。
現在は、民泊の影響や十分にホテルが供給されるようになったことから、若干落ち着いてきています。
②自用のオフィスを売却して賃貸オフィスに移転する
次に②について、説明します。
これは、自社ビルに入っていた企業が、貸借対照表を軽くするために自社ビルを売却してオフィスを賃貸するパターンにあたります。
貸借対照表を軽くすることをオフバランスといいますが、要は、資産を売却して、貸借対照表の総資産を減らすことですね。
これにより、売却した自社ビルは、その買主により取り壊され、分譲マンションなどになります。
しかし、売却した企業は、賃貸オフィスに移転するため、オフィスの床の需要が増えます。
これにより、オフィスの空室率が低下するわけですね。
③梅田への移転需要が増加した
最後に③について説明します。
近年のオフィス需要の特徴として、大阪市内の中心部が好まれる傾向にあります。
それは、通勤の利便性やランドマーク性などの理由があります。
これにより、オフィスエリアの外縁部の企業は梅田エリアに移転するということもあります。
ただ、勘違いしてはいけないのは、ボロボロの雑居ビルに事務所を構えていた人が、グランフロントなどのSクラスビルに移転することはないということです。
理由は、賃料水準があまりにも違うからです。
皆さんも感覚的に分かると思いますが、今まで軽自動車に乗っていた人がレクサスに乗り換えるというのは、あり得ないですよね。
まあ、宝くじとか当たれば別かもしれませんが…
〇まとめ
以上のような理由により、大阪のオフィスの空室率は低下しています。
これにより、賃料が上昇しているわけです。
このことは、不動産会社で働いている人でも知らない人は意外と多いかもしれません。
今回の記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
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